【司法試験】平成30年司法試験 公法系第2問

【平成30年司法試験 公法系第2問】

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 こんにちは、今日は平成30年司法試験公法系第2問の答案を書いてみました。行政法はとにかく過去問をやるのが一番かなと思うのでこの形式をとるのがいいかなということですね。今年の問題でもよかったのですが、ちょっとトリッキーなイメージの問題だったのでオーソドックスな平成30年から書いてみようと思いました、では以下答案となります。

【答案】
第1.設問1
1.本件訴訟1において、X1らとX2らのそれぞれに原告適格は認められるか。
2.原告適格がみとめられるといえるためには、当該処分の取消しを求めるにつき、「法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法9条1項、以下行訴法とする)といえる必要がある。そこで、「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利ゐ侵害され、又は、必然的に侵害されるおそれのあるもの、を意味すると解すべきである。そうすると、原告適格があるといえるためには、①当該処分が原告の一定の利益に対する何らかの侵害を伴うものであり(不利益要件)、②被侵害利益が当該処分に関する法令で保護されている利益の範囲に含まれており(保護範囲要件)、加えて、③当該法令による保護が不特定多数者の一般的利益の吸収解消させるにとどまらず、個々人の個別的法益を保護している(個別保護要件)、ことが必要となると解すべきである。
 なお、上記要件の判断にあたっては、当該法令の趣旨又は目的を共通する関連法令の趣旨及び目的を参酌し、当該法令において考慮されるべき利益の内容及び性質に加えて当該処分が法令に反してなされた場合に害されたことになる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきである(行訴法9条2項)。
3.
(1)X1らについて
 X1らは本件自動車車庫から直線距離で約6メートル離れた位置の建物に居住する住民である。X1らは、本件自動車車庫に出入りする多数の自動車に起因する居住環境の悪化や交通事故の多発するおそれがあることを主張しており、本件例外許可があれば当該利益が侵害されることは明らかである(①充足)。次に、本件例外許可を定める建築金順豊は国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的としており(建築基準法1条)、本件例外許可の要件である第一種低層住居専用地域(都市計画法8条1号)を定める都市計画法も都市の健全な発展と秩序ある整備を図っていること(都市計画法1条)、第一種低層住居専用地域が低層住宅に係る良好な住居の環境を保護すること(都市計画法9条)を目的としていることを鑑みればX1らの主張する居住環境や交通の安全を法令の保護する利益と解するべきである(②充足)。次に、X1らの主張する居住環境利益や交通安全については本件自動車車庫に接近するにつれてその利益侵害の程度は悪化していくものであって、直接的にその侵害を受ける者にあっては上記各法令が個別的に保護していると解すべきである。X1らの居住地域からすると、本件自動車車庫に出入りする多数の自動車の通行による権利侵害を反復継続して直接的にうけるであろうことは明らかであって、加えて、本件例外許可の要綱が申請建築物の敷地から概ね50mの範囲に居住する者につき公聴会の開催を規定していること(要綱第7(1)ア)を鑑みると、X1らの日侵害利益は個別に保護されていると解すべきである(③充足)。
 したがってX1らに原告適格が認められる。
(2)X2らについて
 X2らは本件敷地から約45m離れた位置の建物に居住している住民であり、本件自動車車庫に通ずる道路沿いの建物に居住する住民である。X2らも居住環境の悪化及び交通事故の多発を主張しており、①②の要件については上記で述べたように充たされると考えられる。そこで③の要件についてであるが、約6mというほぼ隣接しているような距離に居住するX1とは異なり、本件自動車車庫からある程度の距離に居住するX2らにとっては権利あ直接に侵害されるといえるほどには程度が深刻なものとはいえず、要綱が定める公聴会の規定についてもあくまで要綱にとどまり内部基準として機能するものに過ぎず考慮要素の1つにとどまる。
 したがってX2には原告適格は認められない。
第2.設問2
1.本件訴訟において、本件例外許可は適法か。X1らの本件例外許可の違法性の主張としては、①手続上の重大な瑕疵がある点、②Y1市長による裁量権の逸脱濫用がある点、が考えられるので以下ではそれぞれにつき検討する。
2.①について
 まず、本件例外許可は建築審査会による同意(建築基準法48条14項)を要件としているが、Aの代表取締役実弟Bが委員として加わり賛成票を投じており、Bは委員から除籍されるべきであった(建築基準法82条)ことから取消原因となると主張することが考えられる。
 そこで当該手続法上の違法がただちに本件例外許可の取消事由となるか問題となるが、処分の公定力を重視するのであれば、手続法上の瑕疵があるからといって直ちに取消原因になると解すべきではなく、手続き上重大な瑕疵がある場合に限って取消事由たると解すべきである。
 委員が例外許可の趣旨に沿って公正な判断をするものが任命される(建築基準法79条2項)ことを考えれば同82条違反は重大な瑕疵にあたるようにも思える。しかし、建築審査会では出席した7名中5名の委員が賛成していたのであって仮にBを除斥したとしても結論が変わらなかったことを考えると処分の法的安定性を覆してまで処分の違法性を貫くことは妥当でない。
 したがって、①は本件例外許可の取消事由にあたらない。
3.②について
 本件例外許可の根拠規定である建築基準法48条但書は当該地域の特性を鑑みて高度な専門技術的判断が必要となるために特定行政庁にはその判断につき広い裁量権が与えられていると解される。しかし、そのように裁量権が広く認められるとしても要綱等内部基準が定められている場合には、それは裁量権の事前行使と解されるべきであるから当該考慮要素を考慮せずに処分をした場合(考慮不尽)、当該考慮要素以外を考慮した場合(他事考慮)には裁量権の逸脱濫用として違法となると考えられる。
 本件では、本件自動車車庫が1層2段の自走式自動車車庫であって床面積は1500㎡である(別紙第21(1))が屋上部分の外周に転落防止用の金属製のフェンスが設置されているのみで壁はなく自動車の騒音、ライトグレア及び排気ガスを防ぐ構造になっておらず別紙第21(4)イロハに反しているにも関わらず裁量権の行使にあたって考慮されていない(考慮不尽)ためY市長の本件例外許可には裁量権の逸脱濫用がある。
第3.設問3
1.Xらは、本件訴訟2において、本件例外許可の違法事由を主張することはできるか。
2.原則としては処分には法的安定性が求められるため、取消訴訟には出訴期間制限が設定されており(行訴法14条)、処分には不可変更力があるとされる。しかし、例外的に処分相互の関係として、①実体的に先行処分と後行処分が1個の手続を構成する場合であって、②手続き的にも先行処分に対する救済が実効的でない場合、には先行処分の違法性が後行処分に承継されるとして後行処分取消訴訟で主張することが許されると解するべきである。
3.本件では、本件確認が建築基準法の規定に適合する者であることを確認書交付の要件としていることから当然に本件例外許可がなされていることが本件確認の要件となっていると解される。加えて、本件例外許可と本件確認は要ったとなって建築物に関して国民の健康及び財産の保護を図っているのであって一体となって行政目的を実現するものであるといえる(①充足)。
 次に本件例外許可については申請者以外の者に通知することが予定されていない。一方で、X1らは本件例外許可がされたことを遅くとも平成28年6月末には知っていたが、Y1市担当職員には後続の建築確認の取消訴訟において争うべきという説明をうけていた。これらを総合的に考慮すれば、X1らには先行処分についてあらそう実効的な救済措置はなかったと解すべきであ(②充足)。
 したがって。Xらは、本件訴訟2において、本件例外許可の違法事由を主張することができると考えられる。
第4.設問4
1.本件訴訟2において、本件確認は適法か。
2.Xらとしては、Y2が本件スーパー銭湯を法別表第2(い)項7号にあたる「公衆浴場」にあたらないと主張することが考えられる。
 かかる主張においては、同項が定める公衆浴場とは、建築基準法制定当時に住宅の浴室保有率が低かったことを鑑みて必要不可欠であると判断された沿革を持つものであり、本件スーパー銭湯はそのような性質を有するものではない点、Y1市では公衆浴場について一般公衆浴場とその他の公衆浴場に区分されており本件スーパー銭湯は価格統制を受けない後者の対象となる点、からも本件スーパー銭湯は公衆浴場にあたらない。
3.また、本件スーパー銭湯には飲食コーナー及び厨房があり、これらの施設は法別表第2(い)各項には含まれていないうえ、騒音や悪臭など第1種低層住居専用地域の良好な住居の環境の保護という趣旨に反することを考えれば、この部分も含め公衆浴場として認定することはできないと主張することが考えられる。
以上

【ひとこと】
 3646字...多い...この年の行政法は例年と比較してもかなり分量がおおかったとは思いますが...ちなみに行訴法9条2項の文言を写経した箇所は不要です笑ブログだから書いただけなので...来年これを8教科やると思うと今からでも気がめいりますね...( ;∀;)
 この問題の配点25:30:30:15なんですけど、最初やったときは配点間違ってんちゃう??ってなりました。どうかんがえても原告適格に30振るべきだし、違法性の承継に30っていうのもなぁ...
 内容面に関してですが、原告適格に関しては、被侵害法益の性質から事実に即してX1とX2の差を表現するというもの。小田急事件がモデルに放っていると思いますが、個人的に原告適格は苦手で、あまりうまく表現できている気がしません(´;ω;`) 
 問2は手続面の瑕疵と実体面の瑕疵の両面から違法性について考えさせる問題。このあたりは司法試験のお決まりパターンなのできっちりと得点できるようにしなければなりません。問3は違法性の承継。誘導で判例を意識するようにと書いてあるので、東京都建築安全条例事件の枠組みに従って二元説から個別事情を斟酌しつつ書くということですね。問4は本件スーパー銭湯の公衆浴場該当性ですが、あとから採点実感をよむと建築基準法130条の3に言及しなければならないことを失念していて、加えて、答案では結論を書かず主張のみにとどまっていることに気づいた...反省( ;∀;)
 如何せん分量が多いので、法律知識というよりは事務処理能力の方が多分に問われるイメージなので過去問の繰り返しが一番対策になるような気がしますね。
 次は、商法か民訴あたりかな...ではまた($・・)/~~~

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